歴史と文化に華開いたかつての都…奈良。奈良に都がおかれたのは710年のことです。
それから1300年近くの時が流れた1998年の12月、京都で開かれた第22回世界遺産委員会で、「古都奈良の文化財」の世界遺産リストへの登録が決定しました。「古都奈良の文化財」は次のような8つの資産で構成されています。
●国宝建造物があり、敷地が史跡に指定されている-東大寺・興福寺・春日大社・元興寺・薬師寺・唐招提寺-
●特別史跡・特別天然記念物に指定されている-平城宮跡・春日山原始林-
長い歴史を経てきたこの地には、今日でも数多くの寺社があり、優れた文化財が伝わっています。
古都奈良を歩けば、雅やかな歴史の栄華を偲ばせるいにしえのロマンへと誘われることでしょう。
奈良公園のシンボル、鹿は古くから春日大社の神鹿として保護され、国の天然記念物に指定されています。その数は1200頭近くといわれ、毎年10月の日・祝日に鹿苑で「角伐り」や餌の少ない冬場の「鹿寄せ」などの行事が行われています。
大仏で知られる奈良時代の代表的な寺院で大仏殿は世界最大級の木造建築物です。天平15年(743年)に聖武天皇が盧舎那大仏(るしゃなだいぶつ)建立の勅願を発令し、その大仏を安置する寺として国力を挙げて造立されました。天平勝宝4年(752年)に大仏尊像が完成。「お水取り」として知られる二月堂での法会はこの年より途絶える事無く続けられています。
神護景雲2年(768年)に国の繁栄と国民の幸せを願って創建されました。深い木立に囲まれた境内には、朱塗りのあでやかな本殿などの社殿があり、その多数は国宝や重要文化財に指定されています。
法相宗の大本山として知られる興福寺。天皇や皇后、また藤原氏の人々の手により堂塔が整備され、奈良時代から平安時代にかけて寺勢が最も盛んになりました。有名な阿修羅像は国宝館で拝観できます。
前身は6世紀末蘇我馬子によって開かれた法興寺(飛鳥寺)で、平城遷都の際、今の地に移転され元興寺となりました。極楽坊はかつての元興寺僧坊の一部であり、鎌倉時代に極楽堂〔国宝〕と禅室〔国宝〕に改築されました。
近鉄奈良駅から東向商店街を抜けた辺り。風景が一転し格子造りの町屋が並び、江戸時代のにぎわいを感じさせてくれます。伝統工芸の店や工房のほか今では女性に人気の和雑貨などが軒を連ね、袋小路のような細い道を歩けば、当時の生活道具を展示した奈良町資料館や伝統工芸品を展示・紹介しているなら工藝館など昔ながらの町人の暮らしを楽しめるでしょう。
仏教彫刻、仏教絵画など仏教美術の名品が多数展示されており、研究や鑑賞には欠かせません。
毎年10月末から11月上旬にかけて、東大寺の正倉院に納められている宝物が展示される「正倉院展」が開催されます。
春日山は春日大社の神山として1000年以上も伐採が禁止されていました。そのため、カシ、シイ類を主体とした常緑広葉樹林の原始林となっています。 森林浴やバードウォッチング、ハイキングを楽しめる遊歩道も整備されています。
若草山は3つの山が重なっていることから、三笠山とも言われています。 毎年1月の第4土曜日に若草山焼があります。夜空をこがす壮観さは、古都奈良の新年を飾る炎の祭典です。毎年多くの観光客が訪れます。
今からおよそ1300年も昔の白鳳時代、天武天皇が皇后(のちの持統天皇)の病気回復を願って、藤原京にて創建されました。その後平城遷都に伴い、養老2年(718年)に現在地に移されました。金堂、講堂などを中心に、東塔と西塔の2つの三重塔を配する構成は独特なもので、薬師寺式伽藍配置と呼ばれています。
聖武天皇の招きに応じ、苦難の渡海の末、日本にやってきた唐僧鑑真和上によって建立されました。
鑑真の没後も金堂や東塔が建立され、平安時代初頭に伽藍全体が完成しました。その時に「唐律招堤」から「唐招提寺」という名になりました。